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プレスリリース

日本発の高耐圧トランジスタモデル HiSIM-LDMOSが国際標準へ!  〜 情報家電・自動車などの低消費電力化によりエコ社会を拓く 〜

  (2008/1/17)

HiSIM*は広島大学が半導体理工学研究センターと共同で開発した回路設計用トランジスタモデルである。
2007年12月28日にHiSIM-LDMOS*がオランダ・アイントホーヘン工科大学のMM20*を制して(最終投票結果は38:3)、国際標準化機関であるCMC*の標準モデル候補に選定された。今後、CMCメンバーからの要求を満たした時点で、国際標準モデルとして一般公開される。これは本年中旬になると予想される。
これは産学連携によって生まれた回路設計用トランジスタモデルが世界の舞台で認知された日本初の快挙である。


(トランジスタモデルHiSIM)
トランジスタモデルの精度が最終製品の性能を左右するため、高精度モデルへの要求は強い。HiSIMはこれを実現すべく、1998年以来広島大学が半導体理工学研究センターと共同開発しているモデルである。

現在、標準モデルとして広く使われているカリフォルニア大学バークレー校が開発したBSIM*では、モデル精度が不十分で先端トランジスタの特性を正確に再現できなくなっている。これに対して、HiSIMはトランジスタの現象を物理的に記述し、これを忠実に解いているため正確で精度が高い。このようにHiSIMは表面ポテンシャルと呼ばれる革新的なモデル手法を先導してきた。

HiSIMはトランジスタ特性を記述した式が物理原理から構成されているので、基本的にあらゆるタイプのトランジスタへの拡張が可能である。これまでに大容量メモリや高速通信などに用いられている先端MOSFET*トランジスタの他に、産業界のニーズに応えて低電圧・高速を狙ったSOI*-MOSFET、液晶用TFT*-MOSFETへと拡張されている。
(HiSIM-LDMOS)
高耐圧トランジスタLDMOSは動作電圧領域が1V程度から250Vまで広範囲に渡る。そのため情報家電、自動車などほとんどの製品で利用されている。そのような状況でありながら世の中には正確なトランジスタモデルが欠如していた。これはモデル化が容易でないためである。物理原理に基づいたHiSIM-LDMOSは多様なユーザニーズに、高精度かつ柔軟に応えることができた。
エコロジー社会への移行が急務である現在、正確なトランジスタモデルはLSIの最適設計を通じて電子機器の低消費電力化を実現するための必須技術である。


(CMCでの国際標準化)
米国政府系標準化機関GEIA*傘下のCMCがトランジスタモデルの国際標準化を推進している。CMCにはトランジスタモデルのユーザである世界の主要な半導体メーカ、EDA*ベンダ等、総数52社(うち19社は国内企業)が参加している。CMCは技術専門家によるモデル評価の後に、投票によって国際標準モデルを選定する。
CMCの標準モデルは技術的に最良モデルであることのお墨付きが与えられるとともに、(a) 広く回路設計者に利用される、(b) EDAベンダから優先的に支援される、(c) CMCの支援でモデルの改良・保守が行われる、などのメリットを享受する。

2006年春から高耐圧トランジスタLDMOSの標準モデル選定が開始された。
これに対して、広島大学はHiSIMの高い拡張性を活かして開発したHiSIM-LDMOSを公表し、標準モデル候補として参画した。この結果、アイントホーヘン工科大学のMM20、スイス工科大学ローザンヌ校のEKV-HV*を含めた3モデルが候補となった。CMCでは4半期毎の会議で技術評価レポートと技術討議を行った後に、標準モデルの選定投票が2段階で行われた。HiSIM-LDMOSは常に他をリードし、標準モデル候補に選定された。


(国際標準モデルを有する意義)
このたびの国際標準化は、HiSIMというすぐれた核となるトランジスタモデルを開発してきた広島大学の研究開発力と、半導体理工学研究センターを核とした日本半導体企業の大きなバックアップ、また、研究開発の初期段階からの経済産業省/NEDO技術開発機構の様々な形の支援があって実現した。

今回の標準化は、LDMOSという比較的低い電圧から非常に高い電圧までを広くカバーするトランジスタに対して行われたものである。もともとこのようなモデルは難しいと考えられていたので、標準モデルの選定投票で、HiSIM-LDMOSの成果に対して38:3という圧倒的な支持が集まった。
高精度なHiSIM-LDMOSを用いることによって設計の自由度が上がり、最適化も可能となる。これは環境に優しい低消費電力へ向けた新たな設計技術開発の可能性を開いたことになる。

(用語説明)

HiSIM: Hiroshima-university STARC IGFET Model 広島大学と半導体理工学研究センターが共同開発したトランジスタモデル
LDMOS: Laterally Diffused Metal-Oxide-Semiconductor 高耐圧・大電流トランジスタ
MM20: MOS Model20 アイントホーヘン工科大学とNXP社が共同開発したLDMOS用トランジスタモデル
CMC: Compact Model Council トランジスタモデルの国際標準化機関
BSIM: Berkeley Short-channel IGFET Model カリフォルニア大学バークレー校で開発されたトランジスタモデル
MOSFET: Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor 金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ
SOI: Silicon-On-Insulator シリコン・オン・インシュレータ(絶縁膜の上に形成した電界効果トランジスタ)
TFT: Thin-Film-Transistor 薄膜トランジスタ
GEIA: Government Electronics & Information Technology Association 米国政府標準化機関
EDA: Electronic Design Automation 電子機器の設計自動化技術
EKV-HV: Enz-Krummenacher-Vittoz-High-Voltage トランジスタモデル名 (Enz, Krummenacher, Vittozにより開発された)